British Museum

「やっぱり私、早めに引退してここの図書館で暮らすことにするわ。ひたすら趣味でもって、思いっきりお金にならなそうな研究でもやって。」

今回の旅行でどうしても行きたかったのがここ、大英博物館。丁度今回の留学生応募の掲示を見る直前に、東京都美術館（上野）で「大英博物館所蔵・アッシリア展」なるものを見学し、いたく感激していたことも手伝って丸１日を費やして見物することとなりました。その気合いの入れ様たるや、朝一番高い切符の時間帯の列車に乗り、開館前には行列までして、昼食も博物館内のレストランで済ませ、駆け足ながら全館全展示室を制覇するという怪挙を成し遂げたのでありました。これくらいの気合いで普段の日本での病棟実習もすればきっと何かが違う、、、筈。

これがそのそもそものきっかけとなった「アッシリアコーナー」の目玉。昔のアッシリアの神殿はこんな石像が番をしていたんだそうです。これ、実は斜めから見て足を数えると５本あるんです。真横から見たときに歩いているように見せるためだそうです。さすがに日本での展示ではこんな大きなものは展示されてはいなかったかと思います。（高さは優に３メートル以上あったと思う）。「目には目を、歯には歯を」の人々は非常に高度な文明を持っていたようですね。

これはギリシャで発掘されたものを元に復元・展示してあります。この類のものが部屋の中にゴロゴロしているところが凄いです。フィラデルフィアの美術館でも「13世紀のイタリアの修道院です」などとそっくりそのまま建物が部屋の中に入っていた展示室を幾つか見かけたましたが、その遺跡に行ってみるとか、ミニチュアを屋外展示する、とかではなくそのまま屋内に展示してしまう辺りの発想がどうも、、、一体何でなんでしょうね？。

例のロゼッタ・ストーン。これもそうですが、良く考えると今までの遺跡３つはそれぞれかの地からの「お持ち帰り」ものなんですね。世界に轟く「大英帝国」がその国力＝カネにあかせて集めまくった、と言えばそれまでですが、、、。どうなんでしょう？その土地その土地の大切な歴史遺産はそこに残しておくべき、なのか。或いははたまたそれらを一括して「人類の遺産のタイムカプセル」として一カ所に集中しておくべきなのか。それぞれそれなりに意味のあることと思われるはしますけど、、、、。

ここには写真としては載せていませんが、他にも色々面白いものはありました。古代エジプトのミイラ、棺の上に顔の絵を描くのが習わしだったのですが、その「顔の絵」のみの展示が特別展示として開催されていました。そこにはクレオパトラのミイラもありましたが、小柄で華奢な女の人、といった感じでした。通常展示の方では、同じエジプトのコーナーや、ギリシャ時代のコーナーなどは当時の生活調度品から揃っており、赤と黒の素焼きの壷の数々や、今でも新鮮さを失わないデザインの装飾品の数々にため息をつくことが出来ます。

また、植民地時代の強大な経済力を考えれば納得の行くことですが、インド・中国などの仏教関係の展示品の山やイラン・イラクなど（フセイン・マクマホン協定とか、サイクス・ピコ条約とか、イギリスがアラブ方面の近代史に登場したことは何度もありました）イスラム世界の展示品のコーナーなどは、本国に行くよりも揃っているのではないかと思わせるほどでした。特にイスラム世界の美しいアラベスク模様のタイル、ガラス細工の数々には、ただただ目を奪われるばかりでした。ガラス細工の器などはシルクロード全盛の時代、遥か唐でも非常に高価なものとして尊重されており、丁度西遊記などでも「瑠璃の杯」として出てくるような（カッパのお化け・沙悟浄は神様の瑠璃の杯を割ってしまって罰を受けている所を、三蔵法師の一向に加えてもらったことになっている）ものです。この時代のシルクロードの行き来は活発で、有名な楊貴妃の愛人・安禄山は本名はAlexanderだという説もありますから、もしかしたら楊貴妃もこんな美しい器で好物のライチを食べていたのかも知れない、、、等と思うと、一度に何百年もの時と何千キロもの距離を旅する気持ちにもなれます。

生活調度品というなら、イギリスを始めヨーロッパ各国の陶磁器（イギリスで例を挙げるならそれこそウエッジウッドの最初期のものから）も沢山残って展示されていたりしますが、こういった美の財産が無料でいつでも間近に見られる、この環境こそが今日、服飾デザイン、美術、彫刻、映画など様々な分野での、優れた芸術を産む土壌なのだとつくづく思いました。

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